「靴に恋して」

靴に恋して [DVD]
2002年、スペイン映画。監督はこの映画が長編デビューというラモン・サラサール。
それぞれに「靴」をキーワードに持つ5人の女性たちが、知らず知らずのうちに交錯し互いに影響を与えながら、生きる意味を見出していく様子を描いた群像劇。

靴のデザイナーになることを夢見ながら、現実には店員を勤めている靴屋のバックヤードから靴を勝手に持ち出す「盗んだ靴を履く女」レイレ23歳。ずっと同棲していた恋人は、大喧嘩の末に家を出て行ってしまう…。
売春宿の支配人を勤める「偏平足の女」アデラ49歳。ある日客として訪れた外交官の男に、「食事に行ってくれないか」と誘われる。一度は断ったものの誘いを受けたアデラは、やがて男に恋心を抱くのだが…。
アデラの娘アニータ25歳は生まれながらに知的障害を持っている、愛犬の散歩が日課の「スニーカーを履く女」。アデラが雇った介護士に恋をしたアニータ。だが深い仲になるのを嫌った母親は、介護士をアニータから遠ざけてしまう。
タクシードライバーをしながら死別した夫の先妻の子を育てるマリカルメン43歳。車内では必ずスリッパに履き替える「スリッパを履く女」。余裕のない生活のなか、子供たちに充分な愛情を注ぐことができず、娘は自殺未遂を何度も繰り返す。
イサベル45歳は外交官の妻として不自由のない生活を送りながら、満たされない日々。なぜかいつも2サイズ小さな靴を履く「小さな靴を履く女」の彼女は、今日も痛めた足先を医者に診てもらう。


「靴に恋して」というタイトルに反して*1、「sex and the city」のキャリーのような靴マニアみたいな女性は出てこなかったが(「小さな靴を履く」イサベルは靴を買うのが趣味と言っていた程度)、それぞれのキャラクターを靴に託して描こうとする試みは面白いと思った。やはり女性にとって靴というのは特別なアイテムなのだろうか。
私が気に入ったエピソードは、アデラの老いらくの恋。「タンゴを踊る音」を情事のときの音に例える話が出てきたが、結局アデラはタンゴを相手の男と踊ることはできなかった。この年齢での失恋って、骨身に沁みてこたえるだろうなあ。
あと、出てくる男性がみんなゲイ…というのはどうなのだろう??

*1:「Reino de Reine」さんの説明によると、「原題の『Piedras』とは「石」という意味」だそうだ。詳細はリンク先でご確認を。しかし『石』なんてタイトルでは誰も見に行かなかっただろうな。これは邦題をつけた配給会社の作戦勝ち。