「ハンネス、列車の旅」

Zugvögel ...einmal nach Inari / TRAINS 'N' ROSES
1998・ドイツ=フィンランド
主な出演者:ヨアヒム・クロル、オウティ・マエンパー、ペーター・ローマイヤーほか  監督:ペーター・リヒテフェルト

ミュンヘンでビール運搬トラックの運転手をしているハンネス(クロル)は、時刻表を見て最短ルートを考えるのが趣味の冴えない男。
フィンランドのイナリで行われる「列車時刻表国際大会」に出場するため休暇届を出したところ、上司に「そんなに休みたいならもう戻ってこなくてもいい」とクビを言い渡され逆上したハンネスは、上司を殴って会社を後にし、イナリを目指して一路列車の旅に出る。
列車での旅の途上、ハンネスはシルバというフィンランド人の女性と出会う。他愛ない話を交わす間にお互いに惹かれあう2人。
一方ミュンヘンでは、ハンネスが殴りつけた上司が、オフィスで頭部を強打した状態で死体で発見されていた。容疑者となったハンネスを追う殺人課の刑事は、ハンネスの自宅を調べ、彼がイナリの時刻表大会に向かっていることに気付く…

ここにきて世間はちょっとした鉄道ブームのようですね。関口知宏の中国鉄道大紀行とか、ドラマ「特急田中3号」とか、ケツメイシの「トレイン」とか。銀河鉄道999の歌詞盗作騒動なんてのもあったり。週刊現代誌上での某キャンペーンとかも。
しかし、私の会社の先輩で自他共に認める鉄オタの方によると、鉄っちゃんというのもさまざまな要素があるそうで、ひとくくりにはできないのだそうです。いわく、「列車の写真を撮るカメラ小僧」、「乗って旅する旅情派」、「時刻表(路線)マニア」、「鉄道模型ファン」、「グッズマニア」、「車体ファン」などなど、さまざまな成分が各自好みの濃度で組み合わさって一人の鉄っちゃんができているそうです。光栄の三国志シリーズの武将みたいに、「カメ86、旅50、時刻表68、模型24、グッズ40、車体15」とか、各人パラメータがあるわけですね。
で、この映画の主人公はそのパラメータで言うと、「時刻表99」という感じでそこだけに特化しちゃってる人です。「AからBまでの最短ルートは?」と聞かれて「A駅を○時○分に出るC行きの特急に乗って、D駅で×時×分発の普通に乗り換えて…」といった具合に即座に答えてしまう、何ていうか“人間駅すぱあと”みたいな。愛読書はトーマス・クックの時刻表。
この映画を見て思ったのですが、確かにヨーロッパって広大な土地で違う国どうしが鉄道でつながってるから、こういう駅すぱあと的な知識が重宝がられるのかもしれませんね。ま、いまならネットでパパッと検索するんでしょうけど、ユーロレイルウェイズのサイトとかで。


そういうわけで主人公にとっては(そしてルート検索をするほとんどの人にとっては)、最短のルートこそが最上のルートなのですが、列車で出会った女性シルバは、「そんなのおかしい。急いで通り過ぎてしまったら、途中の景色や生活が見られない。一番速いルートだとしても、目的地に着くのが深夜になってしまったらバカみたい」と言うわけです。これはこれで「旅情派」の真理ではあります。
っていうかそもそも速く着くのだけが目的なら、鉄路じゃなく空路で行けばいいわけですし。


で、紆余曲折の末、「列車時刻表国際大会」(これは架空の大会だそうです)に出場して決勝に進出したハンネスは、様々なルートの出題で最速のルートを答え続け、累積乗車時間(!)で対戦相手を大きく引き離すのですが(バカバカしいのに緊迫した戦い!)、最後の最後の問題「ミュンヘン〜イナリ」のルートでは、シルバが「途中一泊することになるけどこっちのほうが素敵よ」と言っていたスウェーデン経由のルートを選び、勝負に負けてしまいます。


「人生という旅路にとって重要なのは、最短ルートではなくその過程である」ということでしょうかね(てきとー)。