『タイアップの歌謡史』

タイアップの歌謡史 (新書y)
いつも「【A面】犬にかぶらせろ!」「【B面】犬にかぶらせろ!」の2つを愛読させてもらっている速水健朗氏による、「タイアップという枠組みから日本の歌謡史を読み解いていくと、こんなことがわかった」的な、これまでありそうでなかった視点の本。新書なので読みやすい。


いろいろ思うところはあったのだが、タイムリーなところでは、「タイアップに特化した音楽制作集団ビーイング」という項で、ZARDWANDSDEENT-BOLANといったいわゆる「ビーイング系」のアーティストについて、その匿名性の理由を説明していたのに「なるほど」と思った。

…(略)CM音楽用のユニットという性格の強いビーイングのアーティストは、それほどバンド、もしくはアーティストであるというアイデンティティは強くない。例えば、WANDSなどはたとえボーカルであろうとメンバーの顔ぶれは流動的で、明確な実体を持たないバンドだった。グループは休眠状態の時期も多く、うやむやになって「解体」している。(後略)
 ビーイングのビジネスの最優先事項はCM、ドラマ、アニメとのタイアップにある。必ず原盤権を自社で所有し、CDの売り上げから利益を得る。そのため、従来の歌手が行ってきたコンサートやテレビ出演などのメディア露出はあまり行われることはない(独自にプロモーションを行っているB'zの場合は特殊ケース)。これを徹底したZARD大黒摩季などは、露出の機会はほぼゼロに等しく、本人が存在するのかどうかさえ疑問視されることもあった。

私は、彼らは露出をおさえて神秘性を高めることで、アーティストとしての価値をも高めようとしていたのかと、これまで思っていたのだが。ようは会社サイドにとって、彼らは没個性な職人集団(手駒)に過ぎなかったから、プロモーションの必要もなかったし、なんならメンバーを総入れ替えしても平気だった、ということか。完全にファン不在…。


あとこの本を読んでいると、いろいろ懐かしい曲名が出てきてもう一度聴きたくなってくるのだが、懐メロマニアの私でも音源を持っていなくて、いま一番聴き返してみたいのがこの曲。

このCMで「フランス人」役で出てる人が実はフリーランスのジャーナリストで、オウム真理教の海外プレス向け会見時に上祐氏に向かって「You are liar!」と言い放った人だったとか、しかも自分自身もフランス人ではなくて本当はイタリア人だったとか、曲にまつわるエトセトラを思い出してみたり。
えらいチカチカしたCMだが、当然「ポケモン騒動」の前のもの。いまならCM考査に通らないだろうな。関係ないけど「♪何でもミックス」のところで出てくる「MIX」というロゴが、「トランスフォーマー」っぽくも思える。
…しかし「コーラ+ジン」はまだいいとして、「ジュース+ジン」は「ジュース」というのが漠然とし過ぎだし、「紅茶+ジン」はお味はどんなもんだろう? …私は飲みたくないなぁ*1

*1:当時は実際いろいろ割って飲んでたけど。