氏神

iPodで「曲をシャッフル」でランダム再生していたら、イントロで「スポポン!」とかいう鼓の音が入る、変なロック調の曲が流れてきた。息苦しくてあっぷあっぷしているようなヴォーカルが、「播磨の山奥で」「清十郎が死んで」「少女お夏がショックで乱れた」とか、そんなたわごとのような文句を羅列している。
なんじゃこりゃ? と思って曲名を確認すると、カブキロックスの「お夏狂乱」という歌だった*1


「お夏狂乱」というのは、大正時代に坪内逍遙が書いた舞踊の演目で、恋人清十郎の死により平常心を失ってしまったお夏を描いた、悲哀に満ちた物語だとか*2


出典はともかく、その坪内逍遙作の舞踊を引用したカブキロックスの「お夏狂乱」というこの歌の歌詞が本当にひどくて。「ショックで乱れた」「狂った」とか、同義語の羅列。それをグラムロック(?)に乗せる意味がわからん。
それで「この人たち(特にヴォーカルの氏神さん?)、いま何してはんねやろ?」と訝しく思っていたところ、タイムリーにも今日付けの「日経MJ」紙で、こんな記事を発見。

 新邦楽*3を手がける人々は増えてきたものの、それぞれが個別に活動することが多いのが現状。この状況を打破し新たな流れに育てようと、5月に新邦楽のミュージシャンが一堂に会する催し「ジャポネスクルー」が東京・渋谷で開催される。イベントのプロデューサーを務めるのが沢田研二のヒット曲「TOKIO」のリメーク版「O・EDO(お江戸)」で一世を風靡(ふうび)したロックバンド「カブキロックス」のリーダー、氏神一番さんだ。
 イベントには計6組が参加する予定。和楽器と現代音楽の融合はありそうでなかった分野だが、氏神さんは「クラブで踊っていても畳がある家が落ち着く日本人には向いている音楽。一度でも触れてみれば気に入る人は多い」とみる。
(「日経MJ」3月27日 「和楽器で奏でる洋楽 『新邦楽』旬の響き」より)

氏神さんは…」という三人称も、改めてこうして活字で見るとすごいと思った。普通に今でもご活躍されているようですね。

氏神一番オフィシャルWEB
http://www.ujigamiichiban.tv/

*1:何でそんなものがiPodに入っているかは、また別の話。

*2:日本舞踊にはこの他にも「お光狂乱」や「加賀屋狂乱」など、(主に恋人の死で)悲しみのあまり心が乱れてしまう「狂乱物」というジャンルがあるそうです。詳細はこちらなど参照→http://www.nihon-buyo.com/260kyouranmono/

*3:日本の伝統楽器を使ってジャズやポップス、ロックを奏でる新しい音楽のこと。最近秘かなブーム?らしい。