『怨霊と縄文』

大学ではこういうジャンルを専攻しておりました。梅原猛・著。ISBN:4195977851
この本は1979年に刊行されたもので、その時点での梅原氏の学説(「古事記」と藤原不比等法隆寺聖徳太子、柿本人麿)をざっくばらんに概観し、最後にこれからの展望を述べたもの。…誰がターゲットだったのかよくわからない本ですね。
「わたしの方法論」で滔々と語られていますが、とにかく主観的史観なんですよねー。良くも悪くも。氏の直感が「歴史の闇」に脚光を当てたりする、ということなのですが、その「直感」が鋭いのか鈍いのか…。
ちょっと「危ないなあ」と思うのは、その「直感」がご自身の生活体験に基づいてるところ。たとえば柿本人麿の年齢は定説より上だ、という話の中での以下のような発言など。

 これでは困る。どうして困るかというと、人麿は、高市皇子が死んだときに、壬申の乱のことを歌っているからです。壬申の乱の戦争の有様を、そこに参加したものでなければわからないぐらい上手に歌っているからです。この歌を見て、わたしたちのような戦中派は、この作者には戦争体験があるにちがいないと思わざるをえない。(後略)

戦中派って…(苦笑)。


もちろん、30年近く前の、しかも割とフランクに語ったものをおこした著書なので、今さらこれをとってどうこう言うのはフェアじゃありませんけどね。
知的好奇心は刺激されたので、その後の梅原氏の仕事を、ちょっとおっかけてみたくなりました。