『気くばりのすすめ』

気くばりのすすめ (〔正〕) (講談社文庫)
クイズ面白ゼミナール」などで有名だった、元NHKアナウンサーの鈴木健二さんのベストセラー。当然ブクオフ100円コーナーで発掘したもの。
1982年に刊行といいますから、世はまさに「右肩上がり」の頃。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代ですね。文章の端々にそういった記述が散見されます。
そういったイケイケの時代に、「あえて言わせてもらいますが…」といった感じで、戦後失われた「けじめ」を取り戻そうじゃありませんか、と主張。「自分の話より人の話を聞く」とか、「挨拶をする」とか。氏の言う「気くばり」っていうのは、そうした「けじめ」を言い換えたものなんですね。
一種のビジネス書として、サラリーマンのお父さんだけにウケたのなら分かるのですが、意外と主婦層にも買われたようです。文章の柔らかさ、取り上げられている話題への親近感、そして「面白ゼミナールの人ね」というタレント本の一面。いろいろあったのでしょう。
しかし…いま私がこれを読むと、なんかちょっと語り口が傲慢に思えてくるのです、はい。「私はとにかく忙しい」「講演を頼まれても数十件の依頼に一、二本受けるのが精一杯だ」「若い頃は無茶苦茶に働いた」「今でも週に30時間は読書する」…云々。いや、実際そうなんでしょうけど。「だからどうした」って感じで。
講演で同じ内容をあの柔らかな語り口調で話されれば、間違いなくウケるとは思うんですけどね。