『カモイクッキング』

カモイクッキング―くらしと料理を10倍たのしむ (ちくま文庫)
鴨居羊子・著。
「日本の女性の下着に革命を起こした女性」と呼ばれる鴨居さん。「スキャンティ」という言葉も、鴨居さんの造語(というかネーミング)だそうです。
そんな鴨居さんの進取の心に富んだ人柄がにじみ出ている、素敵な食のエッセイでした。それでいて、随所に以下のようなハッとするような美学も散見され…。

”通”とは、いろんな、文化の崩壊の直前にみせる流星の光芒のようなもので、ついえてゆくものであることは間違いない。
洗練と優美を謳ったギリシアヘレニズムの彫刻のあとには、何が残ったか? 長い空白がつづいたではないか。
利休が修行中、師匠から庭の掃除をせよと命ぜられた。利休が庭をみれば、一葉の落葉もなく、掃かれてある。
そこで利休は数葉の枯葉を、枝を叩いておとし、師匠に「掃除ができました」と言う。庭を視た師匠は満足。利休はテストに合格したという話があるが、これがたとえ、譬え話にしろ、この”通”を最高とする利休の美意識は、やはり、秀吉の力と合一しないときがくることが約束されていたような気がする。

あと、鴨井さんは幼少時代を金沢で過ごされたらしく、金沢の味をいろいろと懐かしく紹介しているのに(同じ金沢育ちの人間として)感激しました。