「砂の器」

薦められて映画版の「砂の器」をDVDで見ました。今回初めてです。小説もテレビ版のほうも全く見てません。
とにかく中盤から後半にかけての、父子の放浪シーンは胸に迫るものがあります。そこに重なる、主人公の和賀が指揮する「宿命」のオーケストラ(実際の作曲は芥川也寸志)。
しかし…まあハンセン氏病にまつわる悲劇が物語の底流にあるわけですが、誤解を恐れずに書くと、ちょっと現実味がないというか…。お遍路さんのようなかっこで物乞いの旅をする父子なのですが、そもそもこういう人を見たことがないので、かわいそうという気持ちは沸き起こってくるのですが、完全な感情移入とまではいかない私がおりまして。幸せな時代に生まれてるんだとか、それは自分が世間知らずなんだとか、そういう引け目は重々感じますが。もちろん宿病にまつわる数々の偏見や差別については、知識として知らないわけではないです。
ま、そんなこと言ってたら、ドラマに描かれるほとんどの描写なんて実際に体験したことがないことだから、感情移入もクソもなくなっちゃうんですけどね〜。
感情移入できるところがあるとしたら、主人公の悲劇だとか、捜査に燃える刑事(丹波哲郎森田健作)の職業意識の高さ(?)だとか、和賀の恋人の軽薄さだとか、その恋人のお父さんである大物政治家のまさに「大物政治家ぶり」だとか…、そういった処々のテーマよりなにより、アレですね。
日本の「ムラ社会」っぷりですかね。