博多:赤間茶屋あ三五

仕事で福岡出張。博多の夜といえば中洲の屋台かラーメン屋が定番なのだろうが、蕎麦っ食いの私は、事前に情報収集をして「これは」と思う日本蕎麦屋をいくつかピックアップしておいた。今夜はそのうちの一軒、「あ三五」と書いて「あさご」と読む不思議な名前の蕎麦屋の戸を叩いた。
店内はカウンター席しかない。煮えたぎる大釜と調理場を目前に、大きな一枚板のカウンターに腰掛けるスタイルは、蕎麦屋というより小料理屋か寿司屋の風情。店内を見回すと、壁に「昼の蕎麦懐石」というメニューが貼ってあるのが見えたので、「あれ、夜でもできませんか?」と尋ねると、似たようなコースをお任せでやってくれると言う。
蕎麦前のお酒を注文。この店は、アルコールはヱビスの壜か〆張鶴しか置いていない。迷わず〆張鶴を頼むと、なんと蕎麦猪口になみなみ注がれて出てきた。

こんな飲み方は初めて。これで約一合か。


料理は蕎麦味噌から始まり、柚子とろろ、天ぷら、蕎麦雑炊(蕎麦の実を雑炊仕立てで煮た小鉢)、かえしを使った出汁巻き玉子(ちょっと不恰好なのも味わい深い)など、蕎麦料理を軸にテンポ良く出されてくる。特筆すべきは辛味大根の美味さ。これだけお代わりを頼んだほど。当然お酒が進んでしょうがない。

途中出てきた蕎麦がき。香ばしく焼き目を付けたの(左)と、蕎麦の風味豊かな柔らかいの(右)が、熱い小鍋に乗ったままで出された。おこげまで残さず平らげる。

鴨南蕎麦がき(ご主人いわく「蕎麦屋ですから一番のおすすめは蕎麦がき、それも鴨汁につけたのが出汁と蕎麦の両方が負けないで一番いい」とのこと)を挟み、〆にいただいたせいろの軽さ。


山口は下関で20年蕎麦を打ち、博多に店を構えて7,8年というご主人の、蕎麦に対する愛情がよく伝わってくる、良い店だった。何よりもカウンター対面式でお任せで料理を出してくれる蕎麦屋なんて、私は他に見たことがない!